病編はじめます

病編はじめます

悪性腹膜中皮腫の発見に至るまで

経過について綴っていきたいと思います。

全ては7年前、母の鼻血から始まった

2012年2月頃

足の付け根上部が、擦れてヒリヒリするなあ…と思った事だった。部位を見ても特に赤くなっているわけではない、でも北風にあたってかさかさになった子供の膝小僧のように、そこだけヒリヒリ感がある。

もともと偏頭痛が酷く、痛み止めが(バファリンやイブ)手放せなかったけど、まぁ生理痛の重い人は大抵こんな感じよね?程度で深く考えたことがなかった。

そんな私でも感じた違和感だったので、母との会話で時々話題にしていた。

鼻血で救急車要請

ある朝、母から電話があった。

朝ごはんを食べて片付けようと炬燵から出た途端、鼻血が止まらない、どうしたらよう、と。

救急車を要請しつつ実家へ駆けつけると、そこには担架に寝かされた血だらけの母の姿が…

水に浸けたようなフェイスタオルの水分がすべて血…あんなに鼻血って出るのかと、すごく怖かった。すぐに電話に気がつけて本当良かったと心底安心した。

病院での診断は原因不明だった。血圧が高いことが気にはなるが、出血箇所は焼いて止めたのでしばらく様子を見てください、と。

母から受診をお願いされる

母の具合が変化することはその後なかったが、

母から、私の足の付け根上部のヒリヒリが気になるから、頼むから婦人科で見てもらって欲しい「嫌な予感がする」とお願いされた。鼻血で救急車に乗ったのは何か理由があるんじゃないかと。

昔から母の「嫌な予感」は大抵当たる。

そして、あの鼻血は確かに「そうかも」と思わずにはいられなかったから、素直に婦人科へ行く事にした。

卵巣を気にしたことがなかった

婦人科の先生が、

「ああ、これはかなり育った卵巣嚢腫だねぇ。さっさと切ったほうがいいよ。破裂すると大変だから。今ね僕の知ってる若い腹腔鏡手術の上手な先生がいるから、彼に切ってもらうといい。紹介状用意するよ。」と。

出産以外で入院したことがなかった私は狼狽えたけれど、振り返るとつくづく婦人科を受診してよかったと思うし、すすめてくれた母に感謝している。

この時の発見がなければ「年内の命だった」と、後にがん拠点病院の先生に言われたのだから。

近所の婦人科に行ってから約2週間ほどの3月なかば

婦人科の先生が紹介してくれた総合病院のI先生に執刀してもらうこととなるが、婦人科の先生いわく、「婦人科宛」の紹介状だと違う先生が執刀する場合もあるけど「I先生宛」に書いたから安心していいよ、と心強い言葉をもらった。

総合病院で卵巣嚢腫、腹腔鏡手術決定

やはり卵巣嚢腫、腹腔鏡手術で卵巣を片方切る事になった。

生まれて初めての全身麻酔。

お腹を切ることは、「手術しかないから仕方がない頑張ろう」という前向きな心と、「全身麻酔やっぱり怖い」とか、「入院中の子供たちの心配」とか…

翌月には希少がんの情報の少なさに泣きながらPCに向かうなんて未来は数ミリも思い当たらず、とにかく不安しかなくて、入院当日まで散々ネット検索して過ごした。

I先生に感謝しかない

手術の際、切り取る卵巣とは別に、腹腔内に無数に散らばる腫瘤(のちに悪性腹膜中皮腫とわかる)があり、「顔つき悪い」ので、数カ所を場所を変え切り取ったとの事。

たまたま手術が必要な卵巣嚢腫で、たまたま腫瘍がみつかり、たまたま学生時代に中皮腫を勉強した病理の先生が中皮腫と思われると診断してくれて、

のちにがん拠点病院をいくつか巡る事になるのだが、この判断のおかげで、驚くほど早く悪性腹膜中皮腫の手術決定に至り、いま思い返しても、I先生に執刀してもらえて本当に感謝の気持ちでいっぱいなのだ。

少ない手札の中でベストを選択するには

中皮腫の情報自体が驚くほど少なくて、なんなら中皮腫と診断名がつくまで時間がかかり治療にすすめない事もざらで。中皮腫とわかっても治療法が確立されていなくて治療薬も選べない、そんな病気。中皮腫の中でも腹膜中皮腫はさらに希少で…

希少がん患者となってわかったことは、

自分でベストを選ばなくちゃいけない事。

しんどくても誰かに相談して決めてはいけないという事。

治療の決定=「命」の選択だから、誰かと共有してはいけない事。

責任は自分にしかない

私に何かがあっても大切な「誰か」に後悔してほしくない、そう全ての責任は私にある。それがベストだと、それが私も後悔しない選択だと思った。

治療の難しさは「試してみないとわからない」事。

後悔するかもしれなくても決めたら振り返らない、そうやって自分を鼓舞しなくちゃいけない瞬間が、人生にやってくることがあると知った。

この時私は、少しだけど、自分の足で「自分の人生」をようやく歩み出そうとしていた。これはあくまで気づくきっかけの一つだったと、振り返ると思う。

健気に今日まで怖さと共存してきた自分を褒めてあげたい( ´艸`) 。

病編、今日はここまで。明日はまた沼編を投稿予定です。

ご覧いただけましたらうれしいです。

by 中皮腫患者mochi